公開日:

2025/09/17

サステナブルとデジタルファブリケーションの接点を探して[GOOD DESIGN Marunouchi|博展]

サステナブルとデジタルファブリケーションの接点を探して[GOOD DESIGN Marunouchi|博展]

2025年春、GOOD DESIGN Marunouchiで開催されたサステナブル・ブランド国際会議に合わせて開かれた、関連企画展「視点の拡張譜-未来に響くデザインの記録」。同展では、新たな資源や素材の発見、それらの特性を活かした製作プロセス、循環を意識した使い方、そして持続可能な社会を支える仕組みや、コミュニティとの協働によって生まれたデザイン事例が紹介されました。それぞれのアプローチが生まれた背景や、実現を可能にした社会的・技術的要因にも目を向けながら、未来に広がる可能性を探る内容となっています。

今回は、企画・運営を手がけた株式会社博展の西村直気さんと熊崎耕平さんに、VUILDの山川・戸倉がインタビューをし、プロジェクトの裏側や、これからのものづくりのヒントについて伺いました。

廃材ゼロを目指した空間づくり

山川 本日はよろしくお願いします。まずはじめに、自己紹介をお願いします。

西村 新卒で博展に入り、10年目になります。現在はユニット2という部署で、3Dの空間デザイナーとしてポップアップイベントや展示を主に担当しています。昨年から社内でデジタルファブリケーションを推進する取り組みが始まり、大学時代にコンピュテーショナルデザインをかじっていた縁もあって、リーダーとして関わっています。今回の展示でも、以前オープンスタジオで発表していたアイデアをアップデートして使用しました。

熊崎 僕は博展に入って21年になります。最初は制作スタジオで大道具の仕事からスタートし、10年ほどでプロダクトマネージャーとして制作管理に関わるようになりました。デジタルファブリケーションの推進にあたっては、社外のネットワークを活かして外部とのコラボレーションや研修を企画する役割を担っています。今回VUILDさんにご依頼したのも、ぜひ一緒にやりたいという思いがあったからなんです。

山川 ありがとうございます。今回の展示と空間デザインについて、具体的に教えていただけますか?

西村 「視点の拡張譜」というテーマで、サステナブルやテクノロジーの観点から社会にブレイクスルーをもたらすイノベーションに取り組む作家の方々をお招きしました。

そのため、展示空間のデザインも、サステナブルという文脈を踏まえて構想しています。着想のきっかけは、工場で必要な部材をくり抜いたあとに残る材料が、大量に廃棄されているという現状でした。そこで今回は、必要な部材とその残材のどちらもフラットに扱い、廃棄を出さずに、両方を空間デザインに活かすことを試みました。単なるモジュール構成ではなく、双方の特性を活かした、新たな空間のあり方を目指しました。

山川 まさに展示テーマであるサステナブルと合致していますね。その上で、なぜデジファブを取り入れようと思ったのでしょうか?

熊崎 実はこの展示会には、VUILDさんにも、EMARFで参加していただいたんですよね。お誘いしたのがちょうど会場構成を考えていたタイミングと同じだったので、ぜひ空間デザインも一緒にやれないか、と思ったんです。社内にも3軸のNCルーターはあるのですが、十分に活かせていないという課題意識もあり、VUILDさんの知見から学びたいという想いもありました。

山川 その後、弊社の川崎ラボにもお越しいただきましたね。プロジェクトの進行はいかがでしたか?

西村 デザインデータをこちらで作成し、VUILDさんにCAMデータをお願いする流れでした。もっと早い段階で相談できていれば、より発展的な取り組みになったかもしれないですね。

山川 納品までは2週間ほどでしたもんね(笑)。そのおかげで新しいプロジェクトのご相談をいただいたり、このプロジェクトのおかげで次に進むきっかけができたのは嬉しいです。

プロセスが価値になる時代へ

山川 お客さんの反応はいかがでしたか?

熊崎 僕は会場でお客さんをアテンドする機会があったのですが、来場者にとっても、非常に伝わりやすい空間になったと感じました。「廃棄物が出ていない」ということが一目でわかるのって改めてすごいなと。

山川 日々プロジェクトを進めるなかで、抜かれた後の材はどうしても廃棄するしかなくなってしまうので、そういった材を納品する経験は僕らにとっても貴重でした。戸倉くんは加工時に気をつけていたことはありますか?

戸倉 部材配置に気をつけて廃棄物を出さないような加工をしたので、納品時には、「板」としてお渡しできたのが面白かったです。今後はデザインとは別に、そういう角度の評価軸があってもいいですよね。僕らも参考にさせていただきたい視点だと感じました。

西村 どうしてもアウトプットに目が行きがちですが、プロセスそのものも大事ですし、そこがユニークだったりすると思うので、今回のプロジェクトができてよかったなと。

山川 博展さんでは全てのプロジェクトにおいて、資源の循環性がどのくらい確保されているかを可視化する、「サーキュラリティ評価」というものがあるんですよね。使い終わった部材を在庫して、次のイベントで使えるようにストックする取り組みもあるとお聞きして、すごいなと。

熊崎 そうなんです。今は意識して取り組んでいますが、将来的には“当たり前のこと”として自然に実践できるようにしていきたいです。

▶︎資源循環率を数値化し、サーキュラーデザインの実現に向けた課題を明確化する「サーキュラリティ評価」の取り組み https://www.hakuten.co.jp/story/recotech_edw2024

山川 今後やってみたいことはありますか?

熊崎 この前、VUILDさんの神流町のツアーに参加させていただいて、森や山を見て、その流通や加工のプロセスを体感できたのが大きな学びでした。デジファブの前にある川上のプロセスを理解することが、今後ますます大切になると思います。そうした川上から川下までをつなぐハブとして、VUILDさんには大きな可能性を感じています。今後もぜひ一緒に取り組んでいきたいですね。

▶︎地域の木材とデジファブの組み合わせが、設計者の創造性を喚起する | 神流町モニターツアーレポート https://note.com/vuild/n/n555d773015b1

山川 ありがとうございます!ぜひ今後ともよろしくお願いします。

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