公開日:

Apr 2, 2025

デザインの発想を支え、かたちにする — CLT積層ベンチの製作サポート[東海大学岩崎研究室]

2024年8月、東海大学岩崎研究室から「予算内で、学生が集える居場所として大型のベンチを作りたい」というご相談をいただき、EMARFで製作をサポートすることになりました。

デザインを実現するための素材選び

今回製作サポートをご依頼いただいたのは、90mmのCLTを積み重ねてつくる立体的な什器「Overlay of activities」。コンセプトは「学生が集える場所」ということなので、ベンチとしてはもちろん、テーブルや棚としても活用できるよう工夫がされています。

画像

ご相談いただいた時点ですでにデザインは固まっていたため、EMARFでは、施工方法や耐久性等の検討を通して、積層方法やディテールのアドバイスをさせていただくことになりました。

如何にデザインを成立させるかを考えるにあたり、最初に検討したのは材料について。コストや納期の観点から、はじめはLVL(単板積層材)の使用を考えていましたが、重量があるため施工時の負担が懸念されました。そこで、より軽量なCLTを提案。これにより、作業の負担が軽減し、安全性も確保することができました。

画像

海老名工場にて1/1モックアップを制作

56枚のCLTを正確に積み上げるためのアプローチ

続いて、56枚のCLT材を積層していく方法として、ボルトを支柱に、一枚ずつ積み重ねていく方法で制作することを提案しました。ボルトを通す穴は一枚ごとに加工位置が異なるため、Grasshopperを用いてデータを管理しながら、3軸CNC加工機で切削。56枚全ての板の加工位置が違うと聞くと複雑に感じられますが、位置のパターンを制限することで効率的な加工が可能になりました。

画像画像画像

Grasshopperで管理

また、位置出し(墨出し)を現場で効率よく実施するために、オリジナルの治具を制作することも提案。板を積み重ねていく際に生じる反りや歪み、ボルトの傾きなどを防ぐため、治具の足元にはゴムシート+パッキンを入れることで、地面にしっかりと固定し全体の水平を保つ工夫をしました。

画像

治具を地面に固定した様子

今回、塗装や組み立ては、学生が主体となって行うワークショップ形式で進めました。施工時のミスを防ぐため、各板にナンバリングとけがきを施し、組み立ての順序と板を重ねる位置が一目でわかるようにしました。これにより、施工をスムーズに進め、3日間で完了させることができました。

画像

製作の記念として、名入れ加工を施した板を留めて、作業終了。積層させた木材で囲うことで、なにもない場所に空間が生まれるような、ジャイアントファニチャーが完成しました。

画像画像画像

「Overlay of activities」作品概要
積層する板の異なる高さと角度の重なりがさまざまはアクティビィを誘発する。
0.マスターピース(単位木材)レイヤー図
積層するそれぞれのレベルに<立ち止まる・座る>などのアクティビティを重ねた。これらをグラデ―ショナルな寸法で配置することで利用者の選択性を高めた。
1.平面  角度での変化で場所を創る
単位となる木材を均質の並べるのではなく30度ずつずらして重ねることで、家具の内側は滞留(人の集まる場所)を外側は誘導(人の対流の場所)を生む。
2. 断面 高さの変化で行為を誘発する
積層する板は、ヒューマンスケールに沿った異なる高さで座る行為やハイカウンターでのメモをとるなどのアクティビティをグラデ―ショナルに配置した。
3.視線  積層により視線のコントロール
積層モジュールの中で、視線の開放と制御を平断面的に交互に配列することで、座位・立位や場所による視線を制御しエッジ効果の心理的な強化を図った。

デザイン;岩崎克也+東海大学岩崎研究室
製作サポート:EMARF

Download a handbook

A detailed look at EMARF case studies,
specialised manufacturing using EMARF,
examples of applications utilising the EMARF system etc.