今回ご紹介するのは、高輪ゲートウェイ駅に設置されたベンチにおける、R形状の部材加工についてです。
ドーナツ状の形状に沿って木パーツをレンガ調に配置したこのベンチを製作するにあたって、特に難易度が高いとされたのが、曲線(R)がかかった入隅・出隅パーツの加工でした。
こうした3次元形状の加工は、3軸のCNC加工や、手加工では難易度が高く、製作可能な業者も限られてしまうことから、今回、Rパーツの加工をVUILDにご依頼いただきました。

材料の特性と、加工の工夫
ご相談を受けた後、まずはクライアントから提供された平面図とスケッチをもとに、3Dモデルを作成しました。この段階で、実現性を考慮しながらフィードバックを行うことで、実現可能な形状に落とし込んでいきました。
そして、完成した3Dデータをもとに、手加工では難易度が高い形状を5軸CNCルーター「BIESSE」で加工するためのCAM*データを設計していきます。
今回のベンチに使用された杉材は比較的柔らかく、細く薄い形状になる部分においては、刃物が入ることで欠けが発生しやすくなるという課題があったため、刃物の角度や加工順序も考慮しながらデータを組み立てる必要がありました。

モックアップ製作時に、欠けが発生した部材
*CAM(Computer Aided Manufacturin)とは、コンピュータを活用して製造プロセスを自動化・最適化する技術です。CADで作成された設計データを基に工作機械やロボットを制御し、高精度かつ効率的な製品製造を実現します。
CADJapan.com
加工精度を保ちながら材料への負荷を軽減するために、CAM設計の段階で刃物の角度や経路をきめ細かく調整するなどの工夫を凝らしました。これにより、手作業での仕上げ作業を極力減らすことができ、トータルの作業時間やコストの削減にもつながりました。

CAMシミュレーションデータ
現場へのひと工夫を込めた、やさしい加工設計
こうして完成したCAMデータをもとに、5軸CNCルーター「BIESSE」での加工に移っていきます。加工したパーツは約170点にのぼり、比較的多ロットではあったものの、CAMデータを丁寧に設計し、加工効率を最大限に高めたことにより、約1週間という短期間で全パーツの加工を完了することができました。

また、施工時に起こり得る誤差への対応として、一部の部材にはあえて「調整しろ」を残した状態で納品しました。

長さを残して納品することで、現場で臨機応変な調整が可能に。
今回、短納期かつ高精度での対応が実現できた背景には、VUILDがこれまで積み重ねてきたデータ設計と加工ノウハウがあります。
三次曲面の加工は、対応可能な業者が限られることも少なくありませんが、VUILDでは形状や素材の特性に応じて、柔軟なアプローチで対応が可能です。VUILDが提供する製作・施工プラットフォーム「EMARF」でも、複雑形状の加工・施工はもちろん、異素材との組み合わせや特殊材への対応など、多様な設計・製作ニーズにお応えしています。
自由な発想をかたちにしたいときは、ぜひ一度ご相談ください。これからも、複雑形状のものづくりに挑戦したい設計者・デザイナーの皆さまのアイデアを、技術で支えていきます。
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クライアント:JR東日本
プロデュース:東邦レオ
設計:TAAO+スタジオキノコ
施工 デザインアートセンター